2022年6月18日(土)・19日(日)に文化財保存修復学会第44回大会が熊本にて行われ、本校の保存修復科 小野慎之介先生(保存修復研究室 室長)と在校生の岸創哉さんが研究の成果を発表しました。
文化財保存修復学会とは
文化財保存修復学会とは、文化財の保存に関わる科学・技術の発展と普及を図ることを目的とした学会です。当初、会員は分析化学などの理系の研究者が中心でしたが、現在では文化財保存のための基礎研究を行う研究者、実際に文化財の修復を行う修復家、美術館・博物館の学芸員、将来の専門家を育成する教育機関の関係者、専門家を志す学生などさまざまな立場の会員が集まり、活発な活動が行われています。
研究内容について
「赤外分光スペクトルによる紙の劣化モデルに対するSHAPを用いた機械学習の説明可能性」
2019年に発生した台風19号により、川崎市市民ミュージアムの地下収蔵庫が水没しました。約23万点の収蔵品に被害が及びましたが、保存修復科ではその中からマンガ原画などの紙作品に対してレスキュー作業を行ってきました。今回の大会では、加速劣化試験による将来的な劣化シミュレーションと、機械学習を利用した劣化要因の探索と対処法について報告をしました。
「メントールを用いた紙資料に対する一時的な防水コーティングの検討 – シクロドデカンとL-メントールの比較研究 -」
私は修復作業を支援するための材料の研究をしています。本研究は作品の一部に水に弱い画材が使われている為に、洗浄することが出来ない。そんな作品に対して昇華性を持つワックス状の材料を用いて、洗浄の間だけの一時的な防水コーティングの手法を提案するものです。材料の能力を科学的に評価することで、修復者は安全に材料を使うことが出来るというわけです。
保存修復科とは?
油彩画、日本画、染織品、木製品、洋紙、文書の6分野における「保存修復」を実践しながら、文化遺産を後世に残すためのスキルを習得します。